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歌誌ポトナム2010年6月号向けエッセー [エッセー]

短歌同人誌ポトナム「回転扉」6月号向け。
テーマ=北原白秋の短歌「草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝て削るなり」を鑑賞する
(見出し)白秋のパレット 長沼節夫
  北原白秋。とりわけ青年時代の作品は様々な色彩感覚に溢れている。それはさながら水彩画家のパレットだ。
 短歌だけではない。例えば詩。「色紅くかなしき苺、葉かげより今日も呼びつる/『口にな入れそ』(『思ひ出』)また例えば唱歌。「利休鼠の雨がふる」(城ヶ島の雨)また例えば散文。「遂には皐月の薄紫の桐の花の如くにや消えはつべき」(『桐の花』巻末)そしてとりわけ第1歌集『桐の花』作品群。「黄なる月の出」「薄青き新聞紙」「ヒヤシンス薄紫に」「たんぽぽの白きを」「あかき夕暮れ」「くれなゐのにくき唇」「青きリキュウル」「黒き猫」「紫の日傘」など何とおびただしい色の洪水であろうか。『桐の花』所収約400首中に色彩が登場するのは何首、などと数えて論じた人もいるに違いない。しかし白秋は後年になるほど色彩から遠ざかり、遂には視力を失って果てる。色彩は白秋の青春と殆ど同義語と言える。
 さて今回の「草わかば~」である。作者は春の芝生に寝そべって赤の色鉛筆を削っている。今は昔、鉛筆を削ること自体、一種心ときめく時間だった記憶がある。凡人の小生はそれで終ったが流石、白秋は違う。若草の上に赤の芯を削り散らして、鮮やかな色の対照をいとおしんでさえいる。白日の下にあっては官能的な幻想さえ感じさせるのだ。おわり。

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